まずは、紹介予定派遣やパートでお試し勤務するのもお薦め

最近は病院看護師から企業の医務室看護師への転職を希望される方がとても多いです。確かに医務室で働く企業看護師の雇用条件は病院看護師にとって魅力的に映るものが多いかと思います。

ただ病院でバリバリ働いていた看護師の場合、全く異なる環境での仕事が合わない事もあります。淡々としたデスクワークが多いですし、病院とはまた違った人間関係もあります。何より看護の機会があまり無い為、人によっては看護師としての遣り甲斐を見付けられないかもしれません。

なので私としてはダイレクトに就職を考えるよりも、例えば紹介予定派遣やパートとして一度働いてみるのがお薦めと思います。人によっては業務に慣れるのにかなりの時間が掛かるので途中で挫折される方も居るのです。

ちなみに派遣やパート勤務でも企業看護師は良い給料を得る事が出来ます。企業にもよりますがそこそこの規模なら時給は2000円前後です。期間募集も探すと結構ありますから、お試しで働くなら短期の求人を選ぶと良いでしょうね。

積極的に意見を述べられる事が大切

企業看護師の適正や向き・不向きはよく話題にされますが、私が実際に働いている中で感じた事があります。それは「積極的に意見出来ない方には向いていない」事です。

企業看護師は労働者の安全と健康を守る職業です。なのでもし怪我のリスクが高い危険の多い職場と思えば改善を求めなくてはなりませんし、健康上の問題で配属変更が必要と思えば提案しなくてはなりません。労働者の立場からは意見があっても企業側になかなか伝えられないものです。なので看護師が労働者を守る立場として、代わりに企業へ積極的に提案して行く必要があるのです。

こう書くとなかなか厳しい仕事のように感じるでしょうが、ようは労働者の状況を企業に伝える役目なのです。企業側は労働者の実態が把握出来ない事も多いですから、看護師の目線で見た情報を伝え、改善策を検討して行く事になります。各部署の上司や人事担当者、更に上の方とも話し合う事がありますから、臆せずに積極的に意見を述べられる方が望ましいと思いますね。

企業看護師にも悩みはあるんです…

看護師の転職先として企業の医務室は人気が高まっている為、羨ましがられたり興味を持って仕事の話を聞かれる事は多いです。確かに病院勤めの看護師から見ると魅力的な面が多々あるでしょうが、企業看護師にもそれなりに悩みがあったりします。

例えば病院とは違い、単なるグチの聞き役になっているように感じる事があります。仕事上の不満を発散させてストレスから来る病気を未然に防ぐ・・・という事も企業看護師の仕事としては重要なのでしょう。しかし命に関わる病気で苦しんでいる患者さんを大勢見てきた立場としては、取り立てて大きな悩みではないように感じる事も多々あります。そんな悩みを一日中聞かされては気持ち的に限界に達してしまう事もあるのです。

企業の医務室で働く上で命の重圧を感じずに働ける事は非常に有り難いです。しかし看護師でなくても勤まるような相談が多いのも事実です。勤務体制や待遇面で企業看護師の仕事は魅力的と感じますが、なかなか全てに満足という訳にも行かないですね。

他部署と連携する場面で感じたこと

勤め始めたばかりの頃はよく分からなかったのですが、医務室で働く企業看護師は他部署の方との連携も大事だと感じます。

例えば健康上で問題を抱えている労働者の相談に乗る際は、その方が働いている部署の上司との連携が必要です。労働者が看護師に相談する内容だけで判断をするのではなく、実際の職場ではどうなのか?無理な様子は無いか?勤務状況が悪化してはいないか?といった事を上司を通して知る必要があります。

また今の部署では健康上に問題があると判断した場合には、上司だけでなく人事部の方とも相談をして対応に当たる必要があるでしょう。看護師は労働者の相談相手になるだけでなく、積極的に働きやすい環境を提案していく必要があるんですね。

ちなみに企業看護師にとって最も身近な協力者は勿論産業医です。しかし企業によっては嘱託産業医の場合も多く、月に数回しか会わない事もあります。なので普段の労働者の健康管理については看護師が責任を持ってしっかり行なう必要があるんですよ。

臨床経験の必要さを実感!

企業の医務室は、看護師としての臨床経験が無くても(新卒でも)働く事が可能と考えている方は多いですよね。確かに企業での看護師の仕事には医療行為が少ないです。しかしいざという時には迅速に労働者の手当てを行なう必要があります。少なくとも臨床経験が3年は無いと勤めるのが厳しいと思います。

実際に私も企業の医務室で働き出して、やはりそれなりの臨床経験は必要だなと痛感しています。企業で働く労働者の中には病気を持ちながらも頑張って働かれている方が結構いらっしゃいます。病気や体調の相談をされた時に、教科書の知識しか持たない看護師では返答に困る事もあるでしょう。臨床経験が6年ある私でさえ経験の無い分野での質問に困る事があるのです。

また現在企業の医務室に勤務をしているのは私だけの為、実は結構プレッシャーを感じる所もあります。その為、暇を見つけては知らない分野の勉強を行なったり講習を受けたりしています。勿論、各種資格も取得して行かなくてはならないとも思っていますよ。

産業看護師の職場は医務室の中だけではない

企業の医務室勤務と聞くと、医務室でゆったりと構えて労働者の相談に乗っているイメージを思い浮かべるかもしれません。私もそう思っていましたし、基本はそうあるべきだと思います。ただ医務室に居るだけで勤まる仕事でもなかったりします。

例えば労働者の相談に乗るにしても、実際に働く現場がどのような状況にあるかを知らなくてはなりません。どの部署では何人が働き、どのような労働環境で、どのような仕事をしているのか。それぞれの部署の上司は勿論の事、平均年齢、平均勤務年数、男女比、新規雇用者、等々・・・。こういった各部署での詳細な情報が必要ですし、データだけでなく自分の目で確認する事も大切なのです。

特に一人で複数の営業所を担当する場合等は自分で積極的に出掛けていく必要もあると思います。製造工場を構えている場合にも労働現場を見ておかなくてはなりませんし、定期的なチェックも必要です。医務室に居るだけでは得られない情報は、自分で積極的に集める必要があるのです。

コミュニケーション能力の重要性を実感!

企業の医務室で働くようになって暫く経ちますが、企業で働く場合はコミュニケーション能力が非常に重要になるなと実感しています。

病院で働いていた時も勿論コミュニケーション能力は必要でした。しかし私の場合は急性期の病棟で働いていた為、どちらかと看護師としての洞察力の方がずっと重要でした。しかし企業の医務室では労働者の健康相談や悩み相談を行ないます。若い方も年配の方も居り相談内容も様々です。病気のアドバイスだけで良いという訳にはいかず、肝心の所をなかなか掘り下げて聞けなかったり、伝えたい事が伝わらなかったりするのです。

またこれは新しい発見でしたが、悩みや問題を抱えつつも今現在健康を維持出来ている方は、病気で入院をされている方よりも我侭かもしれませんね。病気の方の方が素直に看護師の指示に従ってくれるなと、そんな風に思います。まぁ色々ありますが、でも企業の医務室での仕事もなかなかに面白いです。色々な方と関わるのも自分にとって良い勉強になっていますよ。

薬を処方させられる事がある!?

現在企業看護師の求人を探している方は、ちょっと気をつけた方が良い事があります。それは企業によって「看護師が薬の処方を求められる事がある」という点です。

古くから産業医や企業看護師を置いているような企業では、医師の不在時に当たり前のように看護師が薬を処方していた、という事が結構あります。昔は医療の世界も臨機応変に、悪く言えばざっくばらんな時代がありました。ですが看護師による薬の処方は立派な薬事法違反の為、何か起こった時は非常に不利な状況になります。

幸い私が勤める企業の医務室では看護師が薬の処方を求められる事はありません。しかし私の友人が働く事になった企業では、長く働いていた前任の看護師がずっと薬の処方を行なっていたらしく・・・看護師の立場で薬を処方したくない友人と、薬が欲しい社員の間で少々トラブルになっているとか。

今の時代では有り得ないと思ってしまいますが昔の方は「不便になった」としか思ってくれない為、対応がなかなか大変なのだそうです。

仕事に役立つ「産業看護師の認定資格」

企業看護師として働くようになったら学会の認定産業看護師を目指すと良いです。学会の認定を受ければ企業看護師として十分な能力を持つ事を証明出来るからです。

この産業看護師に認定されるには、まず産業看護師として2年以上の実務経験を積み、第一種衛生管理者の資格を取得します。そして産業看護部会と産業保険推進センターが開催する産業看護講座Nコースと産業看護講座基礎コースを全て修了すれば、無事に産業看護師に認定される事が出来ます。

企業の看護師として働くために認定は必ずしも必須ではありませんが、仕事をする上では第一種衛生管理者の資格は必ず必要になって来ますし、また産業看護講座Nコースと産業看護講座基礎コースで学べる物事も大いに役立てる事が出来ます。であれば最終的に認定産業看護師を目指すのは必然とも言えるでしょう。

また、もしかすると今後は別な企業への転職を考える時が来るかもしれません。転職の際には認定産業看護師であった方が採用率もアップし、有利になる事は間違いない筈です。

人とは違うアピールで求人競争率の高さを乗り越える

企業看護師として企業の医務室への転職を考えている方はもうご存知だと思いますが、医務室勤務の求人は非常に人気があり競争率も高いです。私が採用になった今の企業でも、一つの募集に対して30人以上の応募があったと聞いています。

これだけ人気の高い業種ですから、当然、人とは違うアピールが面接では必要になって来ます。企業の中で自分がどのように貢献していきたいかを積極的に話されると良いでしょう。

例えば私の場合は応募の前にまず労働安全衛生法についてしっかりと学びました。そして企業の形態を意識しながら自分の知識をどのように役立てたいかをアピールしました。勿論、労働安全衛生法だけでなく、事前に産業カウンセラーの資格も取得しています。

資格の取得は必ずしも必須ではないでしょうが、有れば書類選考の段階で有利になるのは間違いありません。応募者が多いとまずは履歴書を見て振るいに掛けられるので、書面でアピール出来る資格を取得しておくのは非常にお薦めだと思います。